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純地場産原料で作る無添加和紙2012年12月17日

東京池袋から東武東上線に乗り、わずか70分の埼玉県小川町に、
千四百年の歴史を持つ和紙の産地があるのをご存知ですか。

厳しい冷え込みだった12月初めの週末、
30世紀につながる小川町づくり委員会が主催する、
「化学薬品を一切使用しない無添加和紙づくり講座」に参加しました。
「地産地抄(ちさんちしょう)」をキーワードに、
「その土地に由来するものを使って、その土地で紙を作る」という講座です。

近年の一般的な和紙には、「和紙」であるにも関わらず多くの輸入原料が使われ、
原料の防腐や漂白は化学薬品によることがほとんどですが、
この講座では、次のような原料を使います。
・小川町産なぜ皮楮(未晒し。薬品による漂白なし)
・小川町産トロロアオイ(薬品による防腐処理なし)
・地元肉屋「デリカテッセン アーチャン」の燻製の残灰、薪ストーブの残灰

会場は、紙すきの村~久保昌太郎和紙工房~、
工房の五代目となる久保孝正さんに、指導していただきました。

久保孝正さんは、全国でも数少ない若き手漉き和紙職人であり、
代々受け継がれてきた伝統的な製法による和紙づくりを後世に伝えるべく、
強い使命感を持って活動されています。
今日的な需要に誠実に応えるための、全国的にも稀な和紙製造情報の公開、
地域活性化のための、有機農業をはじめとした他産業との恊働など、
その取組みは和紙を主軸としながら多岐にわたります。

講座は、工房の敷地内にある畑で、和紙の原料となる楮の手入れから始まりました。
枝分かれした細い枝を、はさみで切り落としていきます。

楮(こうぞ)は、一年で2~3mの高さに成長します。
株を残して枝だけを刈り入れることで、そこからまた枝が伸びます。
木そのものを絶やさず、同じ株から毎年収穫できる、優れた資源です。

 

和紙の原料となるのは、黒い外皮と木の芯の間にある、靭皮(じんぴ)繊維。
長く強い繊維で、絡みやすい性質があります。
和紙が薄くても粘りがあり強靭なのはそのためです。

楮100%で作られた純楮紙に、プリンターで印刷したことがありますが、
紙詰まりを起こして、ローラーの間でどんなにグシャグシャになっても、
引っ張りだす時に全く破れません。どんなに強く引っ張っても破れません。
いつも印刷に使っている洋紙とは、別格の強さです。

しかもこの強さ、純粋に、楮の繊維の絡み合いだけから生まれているのです。
繊維を固める接着剤もなく、表面をコーディングする加工もなく、
ただただ、楮の繊維が強く結びついている。それだけ。

なんてシンプルで美しいのでしょう。

 

和紙作りというと、水の中で簾桁(すけた)を揺すっている作業が、
すぐに思い浮かびますが、靭皮繊維を取り出すためにも、
そこから紙が完成するまでにも、何十もの細かな工程を経なければなりません。

この日の講座は、楮畑の手入れから、紙を漉くところまで。
漉いた和紙は後日、天気の良い日に天日乾燥してくださいました。

工房にある松の干し板は、戦前から使っているものがほとんどで、
使っているうちに自然にできた干し板の表面の凹凸(うづくり)が、
和紙の表面にエンボスのように浮き出して、1枚ずつ違った模様に仕上がります。
こういう必然の意匠、たまらなくカッコ良いです。

本工房では、職人の小此木明子さんが、紙漉き作業をされていました。
自分の人生を使って、千四百年の歴史を後世に繋いでいく仕事。
こういう女性の生き方があるのですね。

小此木明子さんは、細川紙技術者協会に所属しています。
細川紙は、小川和紙のなかでも最も伝統的な製法で作られており、
国指定重要無形文化財に指定されているのですが、
驚いたことに、この指定を受けている和紙は全国でたった3つ。
本美濃紙、石洲半紙、そしてこの細川紙です。

私は現在、NPO法人生活工房つばさ・游の高橋優子さんとのご縁で、
高橋さんが代表をつとめる小川和紙活性化委員会の取組みに参加しています。
小川和紙の伝統と未来を表現したロゴとマークをデザインし、
日英併記による新たなパッケージに仕上げました。

 

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