古い帯で作る子どものドレス
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「(幼稚園の)誕生日会にはドレスを着ていかないとだめなの」
いつも男の子からもらったお下がりを着て、黒無地のスニーカーを履いて、
生まれてこのかたベリーショートの娘が、そう言いました。
毎月行われる誕生日会の日に、女の子達が華やかなドレスを着ているのを、
度々見かけてはいましたが、よくよく話を聞いてみると、
誕生月にあたる女の子は、「みーんなドレスを着て」登園するらしいのです。
けれども、子どもの「みーんな」は、あてにならないもの。
念のため、ママ友にも確認。
娘の話は本当でした。
四月から九回行われた誕生日会において、誕生月の平服女子は皆無。
それぞれにおめかしをした子ども達は、ひとりひとり名前を呼ばれて、
ステージにあがり、大勢のお友達にお祝いをしてもらうそう。
そうか娘よ。それはさすがのあなたも気が付くというもの。
でもね娘よ。親が言うのもなんだけど、どうもレースがしっくりこない、
やたらフリルが浮いてしまう、そんなあなたにドレスと言っても…。
と、娘の地味な和顔を眺めながら思い浮かんだのがこれ。
古い帯をほどいてドレスを作りました。
厚手の絹生地に金糸の刺繍という贅沢な素材ながら、
控えめな光沢と古典柄が、日本人の顔のつくりに馴染みます
型紙は、手持ちの服の身頃と、借りてきた洋裁本の袖の形を、
紙に写し取って、継ぎ接ぎして作りました。
反物から生まれる和服は、ほどけばまた反物に戻ります。
自然の恵みを無駄にしない日本人の知恵が作りだした、スローファッションです。
この帯をほどいて反物に戻したとき、これを斜めに裁ったら最期、
その命をここで終わらせてしまうような気がしました。
せめて、大きな刺繍には一切ハサミを入れず、丈を裁つだけにしようと、
スカート部分の型紙を作り直し、端ぎりぎりを手縫いで仕上げました。
これなら、スカートをほどけば、刺繍を生かした何かに生まれ変わります。
幼稚園の誕生日会で、娘のドレスを一番褒めてくれたのは、
ちょうど来日していた、アメリカ人のクラスメイトのおばあちゃん。
ドレスに形が変わっても、日本独自の色使いは埋もれることがないようです。