「できるの木」
in WORKS
創業95年、幼稚園・保育園教材教具メーカーの株式会社ジャクエツと、
2歳児のためのインテリアと家具のシリーズを開発しました。
株式会社ジャクエツは、
大正5年(1916)、初代社長が、母体となる早翠幼稚園を開設。
幼稚園での教材不足を自給して補おうと、教材教具を考案・製造したところ、
人づてに評判を呼び、幼児教育用具の製造直販事業へと展開、
現在では、園舎の建築設計から、遊具、備品、食器、園服、など、
幼稚園・保育園の環境づくりに必要とされる、幅広いアイテムを取り扱っています。
全国69箇所の直営営業店を持つジャクエツは、
幼稚園・保育園に関わる人なら誰でも知っている縁の下の力持ち。
我が家の近所の子育て支援センターでも、娘の私立幼稚園でも、
息子が一時保育でお世話になっている区立保育園でも、先生方にお聞きすると、
「ジャクエツさんね、もちろん、知ってますよ!」とのお答え。
「できるの木」シリーズは、
「自分でしようとする気持ちと、やればできるという自信を育てる」がテーマ。
「できた!」の積み重ねで、自己への自信を深めていけるようにサポートする、
2歳児を対象としたシリーズです。
テーブル、イス、絵本棚など、トータルコーディネートできる、全7アイテムです。
写真の円形の家具は、カバンや上着を収納する6人用ロッカー「えだまる」。
ロッカーは、四角い箱が壁に沿って並んでいることがほとんどですが、
これを丸く自立式にすることで、同時に使用してもぶつかり合うことがなく、
周りの子どもの動作が自然に目に入るように、と考えました。
友達がしていることを、真似してやってみようとする。これが2歳児です。
緑色の「枝」状のバーに、上着や帽子、巾着袋などを掛けます。
白いパネルで仕切られた「丸」い天板が、個々のカバン置きです。
枝にとまっているのは、それぞれ色が違う5色の小鳥。
子どもたちが自分のロッカーにたどりつくための目印です。
不思議な形の「えだまる」が、はじめての集団生活に緊張する子どもの気持ちを、
こちょこちょっとくすぐって、自分で最初の一歩を踏み出してくれたら…、
そんな親心を込めています。
昨年、娘が幼稚園の2歳児クラス(週2日)に通い、
登園時に、カバンの中からコップとタオルとスモックを出して、お支度をして、
降園時に、それらをカバンに入れて…という、いとも簡単に思える動作が、
2歳児にはとても難しいことなのだな、と知りました。
自分でやってみようとする子どもたちをじっと見守り、励まし、
さりげなく手を貸す先生方の忍耐力に、いつも感服したものです。
「えだまる」は、天板にカバンを置いた時に、
立った姿勢でカバンの中をのぞき込め、2歳児でも物を出し入れしやすい高さです。
隣の友達の動作が刺激になって、「やってみよう!」につながります。
隣の友達と緩衝することなく、「できた!」に向かって取り組めます。
インテリアは、家庭では経験できない遊びやかかわりにつながるよう、
特別感を演出する色使いをしています。
長い積み木が重なったような腰壁は、絵本のディスプレイもできるように、
壁から厚みを持たせて、ストッパーを付けたのですが、
ここで遊び始めた男の子たちは、迷うことなく電車遊びの線路にしていたそうです。
やっぱり。
壁に固定された収納が堅苦しくて、「もっと自由で自在で動きのある環境を!」
と考えてデザインしたのですが、実際に子どもたちと使い始めた
現場の先生の言葉にハッとしました。
「壁の収納がなくなって、背景がすっきりしたら、
子どもたちの表情が、以前よりはっきりわかるようになりました。」
そこまでは思い至りませんでした。素晴らしい。
「できるの木」は、キャラバン隊に連れられて、只今全国行脚の真っ最中。
ジャクエツの開発担当の皆さま自らが、ワゴン車で各地を回ります。
現場の声を聞くことで「できるの木」は少しずつ成長します。